「貴方に祝福を贈りましょう!」
狂気まじりの声が高らかに響いた瞬間、起こった異変。
灼熱の炎に炙られたかのような錯覚を覚えた。 同時に、体の内側が蠢くのを感じた。
細胞が変化するのを本能で理解する。
政宗は瞬いた。視界がぶれる。喉の奥から迸る咆吼は己の声か。まるで獣のようではないか。
男のけたけたとした笑い声が耳に五月蠅い。
燃えるような体をどうにか捻って、政宗は広間から伸びる階段、その上を見上げた。
一人の人影。きらびやかな宝石と上質なドレスで彩った女性。
扇で上品に口元を隠していたが、政宗には彼女が笑んでいるのが分かった。己を見下ろして笑んでいるのが。
その瞬間、政宗の中で、心というものは色を失い温度を失った。
気だるい倦怠感にも似た諦めが全身を毒のように駆けめぐる。
政宗は目を閉じた。
「Ah,I see ,my lady」
どうせならその毒がこの息の根を止めてくれればいいのに。
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