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寝ころんでいたらたまたま目に入った。
というよりかは、意図的に入れた視界に映った絵が、はっとするほど鮮明だったというべきか。
元親の腰である。
ひさびさに政宗のほうから四国へ、バカンスと称して出向いてきたのが数日前。
事前に知らせは出してあったから、元親は政宗を歓待してくれ、二人で城下や海などに遊びに出かけて過ごしたが、
数日経った今日は流石に仕事をせねばならないらしい。
適当にくつろいでてくれやと言われた政宗は、ならばお言葉に甘えてとばかりに、適当にくつろがせてもらうことにした。
元親の部屋で、である。
ごろりと横になれば、元親はきょとんと目を丸くした。
「好きにしてていいんだぜ?」
「Ah,だから好きにさせてもらってんだぜ?」
ここに部外者がいちゃマズイというならでていくが、と付け加えれば、元親は頬を緩めて、否と笑った。
「いっとくけど、しばらく構えねえからな。それでもよけりゃ好きにしな」
そう言って背を向けた元親に、そうしてると返したのが少し前のことだ。
別に何か特別な目的があったわけではない。
一人で城下にでるのも気が乗らないし、さらにいえば一人で部屋にこもるのも侘びしい。
同じごろ寝をするのなら、慣れた空気の側がいい。
それだけの単純な理由からだったが、その単純さは、きっと自分にとっては得難いものなんだろうとも、政宗は認識している。
だから政宗は、元親が仕事をしている様を別に眺めるわけでもなく、だらりと体を横たえ、目を閉じ午睡のようなものを楽しんでいた。
元々熟睡していたわけでもない。
ふと目を開けて、強ばった体をのばすために体勢を変える。
と、丁度元親の背中が見えたのだ。
寝返りをうった体で、横向きになり政宗は肘をついた。
瞬きをしてぼやけた視界を鮮明にする。
至極当然のように視界に映るのがこの男であるという事実は、政宗の胸を満たした。
と同時に、温かいと言うよりかは、熱い何かが腹の底を舐めた。
政宗は四つんばいで元親のもとへと這った。
元親は気づいていないのか、気づいていて気にしていないのか、振り返らない。
振り返らない背中の斜め後ろで、政宗は這うのをやめ、そのまま腹這いになったまま組んだ腕に顎を乗せた。
満足げに口角が引き上がるのが自分でも分かる。
やはりいい腰をしている。
政宗はある意味今更のことをうっとりとした気持ちで思った。
元親の腰なんぞ見慣れて久しいし、さらにいえば触りなれて久しい。
肩幅からなだらかな線を描いて、驚くほどにぎゅっと引き締まっている。
城では着物を着ていることも多いが、今日はいつもの服装で元親は仕事をしていた。
つまり、腰や腹の眩しい肌を晒した状態でだ。
なので、政宗は遠慮無くその滑らかな肌を眺めることができた。
脇腹にははっきりとわかる傷跡が残っていて、普段それほど意識することもないが、
時折政宗はその傷を付けた顔も知らぬ相手に嫉妬することがある。
そういうときは、その傷をしつこいぐらいに唇を寄せ、呆れ混じりの元親に、それでも嬌声をあげさせるのが常だった。
今このときは、別に嫉妬に駆られたわけではない。
ただ、かえすがえす、いい腰をしていると思っていただけだ。
政宗は機嫌のいい猫が尻尾を揺らめかせるかのように、膝を曲げ足をぱたぱたと交互に揺らした。
引き締まった曲線がそのまま続くその下は布で隠されているが、それがまたなんともそそられる。
視線をあげれば、鈍い色合いをたたえた胸当てが筋肉の隆起にそい、それもまた体の線を引き立てているように思えてそそられる。
別に欲情したわけではないが、腹の底に抱いた熱は確かに、それに似ているといえば似ている。
見ているだけでもいいが、手を伸ばしたくなってきたと政宗は思った。
その脇腹をそろりと撫でたい衝動が俄にわき上がって、政宗は腹這いになったまま右手を音もなく伸ばし、元親の肌を指先で撫でてみた。
「うはっっ!」
元親は体をびくりと跳ねさせた。
素っ頓狂なその声に、政宗は思わず喉をならして笑った。
反応が返ったことで、俄然気分が上向きになった。
さらにいえば、欲も顕著になった。
もっと触りたくなったのである。
「おま、何してんだよ?!」
手を止めた元親が腰をひねってこちらを振り返る。
「何って、アンタの腰撫でてる」
政宗は非難の混じった問いにそう答えを返して、今度は掌で脇腹をなで、背骨を確かめるようにたどった。
「んなこた分かってんだよ。撫でられてるのはおれなんだからよ」
「なら問題ねえだろ?おれは勝手にしてるから、ほら、アンタは気にせず仕事してくれ」
「なで回されて気にならないわけねえだろうが」
「アンタ敏感だもんな」
「テメエのおかげでな」
「Ah,んな可愛いこと言われたら照れちまう」
「そこは照れるとこじゃねえ、悪びれるとこだ」
軽口を叩きながらも政宗は元親の腰をまるで我が物のように触っていた。
無駄な筋肉がついていない肌は柔らかさなど皆無であったがそこがいい。
元親は持っていた筆を置いたようだ。
かたりという音に、政宗は顔を上げた。
呆れたような、面白がるような、諦めたような視線が政宗を見下ろしていた。
政宗は唇を弧に引き上げた。
「Hey,仕事しててくれていいんだぜ?」
「嘘付け」
「Han?」
「仕事させる気ねえだろテメエ」
心外だと政宗は大げさに目を丸くした。
「至極大人しくしてるじゃねえか」
「これで?」
元親もわざとらしく眉をもちあげる。
政宗はYaと頷いた。
「仕事してるアンタを無理矢理押し倒してねえだろ?」
真面目な顔でそう言えば、基準がそこなのかテメエはと元親は眉を下げた。
「だからアンタは仕事してな」
そのどこか突き放すかのような言い方が気に触ったのか、元親は目を細めたあと体を前に向けて筆を持ち直した。
政宗はそのまま元親の肌を眺め、時には掌で感触を楽しんだ。
元親は触れればぴくりと瞬間肌を振るわせるが、とりたてて大きな反応は見せない。
政宗はそのことについて不満はなかった。
先ほど口にしたように、元親の仕事を邪魔したいわけではないからだ。
が、そろそろ手で触れるだけなのにも物足りなくなってきた。
なので政宗は膝をついて体を起こし、その引き締まった腰に抱きついた。
「うおっ!」
頭上でこれまた奇声があがるが、政宗は気にしない。
「テメエやっぱり邪魔してえんじゃねえか!」
「Ah,そりゃ誤解だ。が、結果的にそうなったのなら、sorry 謝るぜ」
素直に謝罪の言葉を述べた唇で、目の前にある白い肌に唇を寄せれば、行動がともなってねえよと非難を浴びた。
確かにそうかもしれないと、脇腹の傷を舐めあげながら政宗は元親の言葉に納得していた。
初めはただ純粋に見惚れていただけだったのだ。
元親の仕事の邪魔をする気なんて毛頭なかった。
ただ政宗は己のやりかたでくつろいでいただけだ。
「おまっ、舐めんなよ、こら!くすぐってえっ!」
笑い声を上げながら元親が政宗の頭を引きはがそうとする。
が力の入っていないその手は政宗の髪をかき乱すだけで終わっている。
政宗は元親の胴体にがっちりと腕をまわして、今度はへその上に口づけた。
「くすぐってえだけか?」
けらけらとした笑い声の中に混じった艶っぽい吐息。
それを確かめるように顔をあげれば、ぺしりと掌で顔を叩かれ、政宗は思わず顔を不満げに歪めた。
くつくつと喉を震わせる笑い声が頭上から降ってくる。
叩いた掌で元親はそのまま政宗の前髪をかきあげた。
開けた視界にうつるのは、目を細めて口角を引き上げた元親の笑みだ。
「素直に構って欲しいって言えや」
その声はひどく優しくて、どこまでも甘く鼓膜を震わせた。
政宗は腕を元親の腰にまわしていた腕を解いた。
体を起こす。
その心臓の上に掌を置いて、政宗は下からその顔に己の顔を寄せて笑んだ。
「愛してくれよ、darling」
唇がふれるその隙間で哀願するように囁けば、掌にふれていたその肌が震えたのが分かった。
重ねた唇が笑んでいることを知る。
「連帯責任だからな。お前も一緒に怒られてくれよ?」
四国のお目付役の小言は小十郎に勝るとも劣らないものだったが、それも元親と並んで聞くのであればまあ耐えることはできる。
結果的に仕事をおくらせることになる原因になるであろうことは自覚していたので、
仕方ねえなと素直に政宗は頷いた。
よし、と元親が力強く言った。
政宗の頬に両手を添えて、にかっと笑う。
「それじゃおれにもお前のケツを触らせろ」
仕返しなのか何なのか、楽しげな笑み全開でそう求めた元親に、政宗は大胆なHoneyは嫌いじゃねえぜと肩をすくめた。





+あとがき+
フラットというかむしろカーブ。
兄貴の腰談義(爆)
二次の素敵本にて、友情出演してた兄貴の仕事してる斜め後ろからのアングルに、
腰エッロ!!!と叫んでしまったところからおちてきた話です(身も蓋もない)
あの見えそうで見えない腰から下とか、あの絶妙なラインとかほんとエロイよね兄貴の腰って。
きっと筆頭も兄貴の腰は日本一って思ってるよね、と話をふってみました。
ただのバカップルです。
このだらっとした空気感でラブい戦国ダテチカが最近好きな感じ。
だらっとしたのがむしろいい(笑)