Interlude
高校一年目の夏は、非常に楽しかった。
文化祭の準備だといっては、クラスの皆と暑い教室で騒ぎ。
インターハイにでる友人の応援にもいった。
武田家のお館様の引率で海にも行ったし、夜には花火もした。
あっという間の夏だった。
新学期に入れば、学校は文化祭の準備一色にそまる。
一学期のころは、何だかんだと言いながら、帰りもぐだぐだと政宗や佐助たちと連みながら帰っていた元親だったが、
二学期に入ってからは、放課後の準備で時間があわずに、一人や佐助と二人で帰ることが多かった。
けれどこの日、日が暮れたころに佐助と並びながら下駄箱に行けば、先客がいて。
「あ」
「お」
政宗、幸村と顔を見合わせて、なんだかひさしぶりだなと思わず笑った。
大会が終わったからか、幸村もクラスの準備にかり出されているのだという。
やる気があるのはいいが、勢い余って、せっかく作ったものを壊してしまうから、戦力にはなってないと、忌々しそうに政宗は言った。
幸村は申し訳なさそうに肩身を狭くしているので、一応自覚はあるのだろう。
その姿に、元親と佐助は思わず声をあげて笑ってしまった。
「笑い事じゃねえぜ全く」
おかげでおれが子守係だ、と政宗が吐き捨てれば。
幸村も言いたいことがあるのか、きっと唇を引き締めて反論した。
「そういう政宗殿とて、一々一つのモノに凝りすぎだと委員長殿に怒られていたではござらぬか」
「凝るののどこが悪いんだよ?どうせやるなら完璧目指すのが当然だろうが」
「それで数が全然足りてないと怒られていては意味がないとは思いませぬか」
「その足りてない数の一部を使い物にならなくしたのはテメエだろうが!!」
とうとう胸ぐらをつかみ合ってにらみ合い状態に入ってしまったので、
そこでようやく、腹を抱えて爆笑していた元親と佐助はやんわりと間に入ることになったのだ。
何故なら四人ともすっかりと忘れていたが、ここは下駄箱で、同じように準備で疲れた皆様が帰途につこうとやってくる場所であるからだ。
派手な喧嘩に突入するのはさすがに迷惑だろう。
「とりあえずラーメンでも食って帰ろうぜ」
そう丸め込めば、二人とも腹は減っているのか、素直に頷いた。
時間が全然足りないのだとか、ステージの催し物ではどれがおもしろそうだとか。
そんな前情報を好き勝手にはなしながら、少し下がった気温の中歩いた。
ああ、いつのまにか夏は終わって、秋の風になっている。
ふと、そんなことを思って、元親は横を歩く友人達を見やった。
ひさしぶりな時間は、どこか新鮮さすらともなって、元親の中に鮮やかな軌跡を残していく。
やっぱり、こいつらと連んでいるのは好きだなあと。
今日は偶然、帰途が一緒になったけれども、文化祭が終わるまでは、この時間もしばらくはお預けだ。
クラスの皆と騒ぐのも楽しいけれど、少しばかり、寂しいかなあと。
ふと思って。
そんなことを思う自分がおかしくて、元親は小さく笑った。
=あとがき=
お祭りは、準備しているときが一番楽し。
遅くまで準備して、帰り道に買い食いして。
文句をいいながらも、やりはじめればやっぱり楽しい。
筆頭は嫌々を装っているが、やり始めたら完璧にこなしたがるタチだと思います。
故に、妙〜に芸が細かい仕事をしそうです(笑)
そのへんは適当に手を抜く佐助。
心意気は買うクラッシャー幸村。
兄貴はきっと、ちょっと不器用だけれどもスタンダードにこなしていくかんじ。
筆頭には薔薇の造花とかまかせればいんだよ(微笑)