ブラスター
さあ青空のもと飛び出して
梅雨なんていう言葉なんか知ったことかとばかりに晴れた青空。
いつもと変わらぬ昼食風景。
ただ、元親は若干食べるのを急いでいた。
それに気づいた政宗が眉をあげて元親を見やる。
「Hey,今日はまたいつにも増して早食いじゃねえか」
先コウに呼び出されでもしたか、とからかいまじりに政宗がそう問えば。
元親はぎろりと横目で政宗をにらんで、横においていたペットボトルを口にくわえた。
茶を流し込んで、手の甲で唇をぬぐう。
「ぶわっか、んなヘマすっかよ!!おれは!!これから!!サッカーしにいくんだよ!!」
なぜか単語でいちいちぶちきって、元親は唇を引き上げた。
「サッカー?」
「おうよ。体育で決着がつかなかったんだよなあ」
そこまで言って、ふと元親は政宗を見た。
そして、何か思いついたようににいっと笑う。
元親の怪しい笑みに、政宗は少しばかり目を細めた。
この顔は何かたくらんでいる顔だろうと、横目で二人を見ていた佐助は思った。
同じことを政宗も思っていることだろう。
「助っ人オッケーなんだよ、政宗」
「へー」
なんとなく話の先が読めたのであろう政宗は、これ以上ないほどの棒読みで気のない相槌を打った。
「ってなわけで、てめえも来いよ」
「遠慮する」
「なんで!!??」
「何でもくそもあるか。たりい」
胃がもたれると返す政宗に、元親は顔をしかめて、てめえはオッサンかとつっこんだ。
そこへ。
「チカ殿!チカ殿!」
はいはいと挙手した幸村に顔を向けて、元親は先を促した。
「それがしもサッカーしたいでござる!!」
「よく言った!!さすが幸村!!話がわかるねえ!」
話がわかるとかそういう問題じゃないだろうと思った人間が約二名ほどここにはいたわけだが、
そんなことはサッカー魂に火がついてるやつらにはわからない。
まあ、分かったところで気にしないだろうが。
幸村の肩を機嫌よく叩いて、元親は政宗をふりかえった。
助っ人を見つけたその機嫌のよさそうな顔に、瞬間政宗はムカっとしたように目を細めた。
「ま、テメエがきてもオレ様の足手まといになるだけかもなあ?」
唇を吊り上げて寄こす視線はきらりと光って笑っている。
たったそれだけのことで、たやすく目をギラリと光らせる悪友を見やって、佐助は内心で小さく笑った。
もともとそれほど忍耐強い男でもなかったが、どちらかといえば政宗はクールなたちだ。
心底どうでもいいと思っていれば、相手になんぞしないし、まず苛立ちもしない。
だというのに、元親の言動には簡単に反応してしまう姿は、まことに政宗らしくない。
クールなんぞという言葉とは程遠い、まるでそう、瞬間湯沸かし器のようだと佐助は思う。
そう、いとも簡単に熱をあげられ、煽られる。
凶悪に眉を跳ね上げて、政宗は唇をゆがめた。
「ああ?!何寝言ほざいてやがる?!サッカーなんぞよりも昼寝でもしたほうがいいんじゃねえのか?」
ゆらりと、二人同時に立ち上がって顔を付き合わせれば。
「寝言は寝ながら言うから寝言っつうんだよ。
この目がばっちり開いてるのがわかんねえなんて、目が節穴にもほどがあるんじゃねえの?」
「目は開いてても脳みそは寝てんじゃねえのか?」
「とかいってテメエよお、おれのボールさばきについてくる自信がねえだけなんじゃねえの?」
「Ha!んなわけあるかよ。助っ人のおれが、テメエの出番全部とっちまうんじゃねえかって遠慮してやってんだよ!
部外者のおれに勝ちを決められたんじゃあ、立場がねえだろうが?」
「あんだとお?!立場がねえかどうか、やってみろや!!」
「おおよ!!やってやろうじゃねえか!!」
まことにスムーズに話はついたようだった。
互いににらみ合うこと数秒。
二人同じタイミングで体をはなし、片づけをしだす。
「佐助、テメエは・・・」
「おれは差し入れ係で。何がいい?ジュース?ポカリ?」
そう問えば、異口同音で。
『ポカリ』とかえった返事。
ああ、素晴らしいシンクロ率だねお二人さん。
二人前をみたまま器用に軽い挑発の応酬。
その後ろをひょこりとついていく幸村を手を振って見送って、佐助は一度のびをした。
見上げた空は水色。
「あ、飛行機雲」
音もなく上へ上へと伸び上がっていく白い筋を、何とはなしに目で追った。
「平和だねえ」
さてポカリを買って、応援しに行きましょうかと腰を上げる。
どうせ昼休みが終わる頃には、睨み合ってたことなんてなかったように、
3人肩を組む勢いで、互いの仕事を褒め称えあってるに違いないのだ。
それはそれは立派な武勇伝を語ってくれるだろう。
=あとがき=
四人組の体力余ってる昼休みの風景。
入学式へ向かう高校生やお母様がたを電車で眺めながら、ああキラキラしてるよ〜と感慨に耽ったときに思い至ったブツ。
最近の高校生は本当にデカイ子が多いですよね(笑)
体力余ってる男子はよくバスケやらサッカーやら元気に走り回ってるのをみては、
時間そんなにないのによくやるな〜と感心した想い出が有ります(笑)
ウチの佐助のスタンスはこんな感じ。
一歩引いてみまもり組です。
政宗はカッコつけてクールぶってたい組。
兄貴と幸村は全力で走る組。
ああ〜〜〜高校生ってイイなああっっっ!!!!