勇者様と愉快な兄貴たち
小ネタ投下部屋。中ボス時代、仲間時代、混在中。
「楽しく行こう」それがモットー。


03.酒場での邂逅 中ボス編 by勇者
何故かそいつらはよく酒場で会う。
「よう!」
軽く手を上げて笑いながら、さも当然と言わんばかりに、隣に座れよ!と元親は催促する。
政宗の方はそんなテンションの高い元親を横目で一瞥したあと、何も言わずに酒をなめてるか、
にやりとした笑みを浮かべながら嫌味の一つでもかけてくるかのどっちかだ。
「相変わらず土くせえ格好してるな」
今日はどうやら後者らしい。
こいつら二人は一応魔族で、いうなら自分たちの敵陣にいる連中なんだけれども。
当の二人には、そんな感覚は全くないように思えて、というかおそらく絶対、ないんだと思うのだが、
ちょこちょこと顔を合わせるたびに、何とはなしに一緒に酒を飲むという図にもなれてしまった。
別に毒を盛ってくるわけでもなく、いきなり斬りかかってくるわけでもない。
陥れようという気配の欠片さえもない。
元親は、最近どんな場所へ行ったか、なんていう近状を聞きたがり、政宗と言えば、それに横から口を挟む。
合間に酒とつまみを口に入れて。
そうしたら、じゃあまたなとふらりと消える。
もちろんちゃっかり代金を押しつけて、だ。
なので、酒を注文しつつ先手を取っていってみた。
「今日はおごらねえからな」
「んなけちけちすんなよー!」
「酒が不味くなるようなこと言うんじゃねえよ」
すぐさま返ってくる理不尽この上ない主張。
嫌なら別に隣に座ることはないのだけれど。
まあ、たまにはいいかな、なんて思えてしまえている時点で、ほだされているなあという自覚はあった。


02.戦闘についての諦め by勇者
まあこの二人と一緒に旅していくと決めたときから、何となく分かってはいた。
戦闘において、ますます自分の影が薄くなるんだろうなということくらいは。
おれだって前衛戦士系なんだが。
が、それ以上に、政宗と元親の二人は前衛戦士系というか、もうそれ以外にはないというか。
なんせ、こいつらはまず戦闘が始まった瞬間、とりあえず敵につっこんでいく。
「おっしゃあ!!テメエら、尻尾まいて逃げたりすんなよ?!」
犬歯を除かせて、爆発するかのようなテンションのこれは元親。
「Ha!おれの前に立ったのが不運だと思って諦めるんだな」
にやりと、心底楽しそうな、それでいて舌なめずりをする獣みたいな物騒な笑みを浮かべて笑うこれが政宗。
なので、弱いモンスターたちなら、こちらが動く前に決着がついてしまうし、
強い敵ならなおさらのこと、何やら血が沸き立つらしく、喜々として特攻をかけていくものだから、
おれがやることといえば、少しでもダメージ減らすための補助呪文や回復、
そして二人に怒鳴られて、攻撃力を補助する魔法の行使。
まあだから不満があるわけとかじゃない。
国にいた頃から、突撃するだけが能じゃないことは知っているつもりだし、
実際おれは補助系の呪文も筋がいいと本職の魔法使いから褒められたこともある。
だから別に、おれも戦士系なんだからたまには直接攻撃に参加したいとか、まるでこれじゃ見学人みたいだとか、
っていうかそもそも主役は誰ですかとか、不満があるわけじゃない。
おれはまあ、あれだ、お前らがたいした怪我もなく元気に敵をぶちのめしてくれてたらいいよ。


01.金食い虫 by勇者
実は結構気になっていたのだ。
武器屋や防具屋でときおり目にする装備品の中で、
どうあがいても仲間達、ましてや自分ですらも装備できないものが並んでいることについて。
しかもそれはべらぼうに高い。
だいたいにおいて、職業やタイプにより装備できるものの種類は決まっているのだ。
件のブツは、一件、戦士系のためのものだとは思う。
が、自分にも装備できない。
他の戦士系の仲間にも装備できない。
じゃあ誰が装備するんだこれは。
っていうか本当に装備できるのか?
でも装備できなきゃ置いてないよなわざわざ。
そう店に行くたびに首をひねっていたら。
「Hey!おれはこれにするぜ」
「あ!ズリイ!おれもこれがいい!」
0が並ぶ値札なんて欠片も視界に入っていない身勝手な声を聞きながら、内心で絶叫した。
っていうか、お前ら用かよ!!!!