no title
視線を感じて顔をあげれば、元親がじっとこちらを見ていた。
その視線は別にこちらを凝視しているというほど強くもないが、けれども気を引く程度には力を持っていた。
そして温かいような、それでいてどこか切ないような色を含んでいるように思えて、どうしたと問う声は、我ながらどこか戸惑っていたように思う。
元親は唇に小さな笑みをはいたまま、しかし問いには答えずに政宗のほうへと膝をすすめて寄ってきた。
そして、向き直った政宗に腕を伸ばして、正面から体を寄せたのだ。
自分より重い体を抱き留めてその背中に腕をまわしたのは反射だった。
体がぴたりとくっついている。
元親が肩口に顔を伏せているから、首筋が髪でくすぐられる。
硬質だと思っていたそれは、触ると案外柔らかい。
合わさった体を見下ろしながら、元親の行動に疑問を覚えながらも政宗は無意識に元親の背中を撫でた。
言葉もないから、妙に静かだ。
沈黙が嫌いなわけではないが、自分だけが意味が分からないままでは居心地が悪い。
ぴたりと合わせた胸からはどくどくという心臓の音が聞こえる。
早くもなけりゃ遅くもない。
そのうち鼓動が合わさって違いはなくなる。
着物越しに元親の熱を感じていた。
ぴたりとくっつけた体がじとりと熱くなってくる。
そうなればもう、どちらの体温なのか分からなくなる。
体の境目が曖昧になる。
体を繋げているのとはまた違った感覚だった。
元親の吐息が肌をかすかに撫でるが、息を潜めているのかそれだけだ。
元親の声が鼓膜を震わすことはない。
政宗は目を閉じてみた。
声も姿も認識できなければ尚更のこと。
ずっと一つであれるような気がした。
そして、ふと唇だけで笑ってすぐに目を開けた。
悪くはないが、気づかずにいた己の願いを形にさせられたような気がして、どうにも気恥ずかしかったのだ。
なので政宗はにやりと唇を引き上げて、そのまま元親の体を押し倒した。
「構って欲しいならそう言えよdalring」
髪に指を絡ませれば、下から政宗を見上げた元親はふと吐息をこぼした。
そして。
目を細めて唇でふわりと。
ほろ苦く笑った。
「誤魔化してくれんなよ」
「・・・・・・」
唇から笑みが抜け落ちる。
元親を見下ろして政宗は一度瞬いた。
sorryと、言おうとして止める。
代わりに隣に体を伏して、元親の体を腕に抱いた。
さっきと同じように体を寄せて。
さっきよりも強く、その体を抱いた。