Silver Family & Boy Friends

待ち合わせによく使われる時計台がある広場。
休日の朝十時だ、そりゃ人も多い。
が、その中にあって、衆目を集めるところがあった。
囁き合う好奇心の声や、女達の少し押さえられた黄色い悲鳴じみたもの。
男共からの感心したような声を耳にするにあたって、政宗は己の眉間の皺がぎゅっと深くなるのを自覚した。
「揃って外で待ち合わせすると、相変わらず人目を引くねえ」
「政宗、眉間の皺が凶悪になってるぞ」
「Ａｈ，うっせえ」
慶次も家康も朗らかに笑っているが、それは本音なのか聞きたいところだ。
今日は三人とも恋人とのデートである。
その恋人達は兄弟という間柄で、よって自分たち男三人も嫌でも一緒にいる時間が長くなった。
兄弟はそれはそれは仲がいいのだ。
それこそこちらが嫉妬してしまうくらいに。
今日も所謂トリプルデートというやつだ。
外での待ち合わせで自分たち三人が揃ってしまったのは、全くの偶然。
しかし、恋人のほうはそうではない。
仲良く兄弟三人揃って待っている。
視線の先。
行き交う人々の視線をひいて、ざわめきの渦中にいる三人。
確かに、三人とも珍しい銀髪で、しかもそれが似合っている（染めているわけではなく地毛なのだから当たり前だが）
長男の元親は大柄だが人好きのする笑みと好感の持てる雰囲気から元々一人でも人目をひきやすい。
次男の半兵衛は、つんとすました態度ながらも、その美々しい雰囲気と、女達も羨むほどの整った相貌で衆目を引く。
三男の三成は、一重の目元は剣呑なことこの上ないが、触れれば切れそうなその危うさが気になってしまうし、よく見れば整った顔をしているのだ。
そもそもこの三人兄弟は、一人でいても目立つのである。
それが三人そろえばどうなるか。全く系統の違う三人ゆえに、何故この組み合わせ？と一層人々の興味を引き立てることになるのだ。
相乗効果というやつである。
しかも何やら他人を割り込ませない気安さが三人の間にはあって（兄弟だからだが）余計に効果をあげていた。
今も、半兵衛が携帯をいじっているのを元親が上からのぞき込み、三成は少し傾けられたそれを半兵衛にくっついて横から見せて貰っている。
「・・・」
妙にキラキラしく見えるのは何故だろうか。
「あんま家とか学校とかじゃあ気にしないけど、三人揃うとやっぱ華やかだよねえ」
慶次は口笛でも吹きそうな顔でそう評した。
「確かに、あそこだけ世界が違ってみえるな」
うんうんと笑顔で頷いているのは家康。
「・・・だから迎えに行くっつったのによ」
眉間に皺を刻んで吐き捨てるように政宗は言った。
「そう言うな、政宗」
「そうだよ。待ち合わせしてデートしようなんて元親に言われて、政宗だって断れなかったんじゃん」
そう言われれば政宗も黙るしかない。
そんな可愛いお願いをされて断れるわけがないだろう。
しばし三人はそのままキラキラしく輝いている場所を遠巻きに眺めた。
目の保養である。
しばし無言で眺めて。
「でもやっぱり半兵衛が一番綺麗だよね」
「三成が一番美しいな」
「おれのＨｏｎｅｙが一番cuteだ」
タイミングは見事に被ったが、内容は微妙にハモりきれなかった。
三人は視線で互いをみやり、そして肩をすくめた。
互いの主張はいくら議論しても変わらないことを知っていたので。
しかしながら、そろそろ黙ってみているのも限界になってきた。
恋人が素晴らしいと認められるのはやぶさかではないが、そうじろじろと見られていると面白くない。
腕の中に閉じ込めて、あれはおれのだと主張したい。
その考えは眺めているだけの男三人、共通していたようだ。
互いに目配せをして、堂々と人混みを分けて歩き出す。
「半兵衛〜！」
慶次がよく通る声で名を呼び、ぶんぶんと大きく手をふった。
「すまない、三成、待たせたな」
爽やかな笑みに苦笑を混じらせ、家康が首を傾いだ。
「Good morning,honey　今日も美人で嬉しいぜ」
唇を弧に描いて、政宗が笑んでみせれば。
人々の注目を攫っていた、けれどもその視線にはまったく関心を払っていなかった三人の目が、意識が、こちらを向く。
この瞬間がたまらなく快感だ。
「３分遅刻だね」
「貴様ら、遅刻してきた分際でなんだその態度は！もっと悪びれろ！」
「まあ、３分くらい多めにみてやれよ。何だ、お前らも一緒に来たのか？」
笑顔で返された元親の言葉に、政宗慶次家康の三人は一度顔を見合わせ。
「まあね！」
「そんなところだ」
「たまたまだ」
にこやかに、爽やかに、面白くなさそうにと様子はそれぞれだったが、声を合わせてそう言った。

＜あとがき＞
３が発売してしばらくしたころに迸った銀髪三兄弟妄想です（爆）
全員彼氏もちで全員右なのは気にしないであげてください。
可愛いからいんです（きっぱり）
長男の彼氏と三男が長男を間に挟んで争っているのが大層ツボです（笑）
次男が最終的な頼りです。
それぞれがこんな風に平和にデートするまでにどんな悶着があったのかとか想像すると悶えます。