説き

「なあ、アンタに欲情してんだが」
元親の目を真っ正面から見据えて、目を剥くような台詞を、さらりと政宗はのたまった。
元親は一度瞬いて、これまたあっさりと頷いてみせた。
「面見りゃ分かる」
あっさり頷いた元親に、ほう、と政宗は面白がるように眉を上げた。
「間違っても、女どもには会わさせたくねえ面だ」
政宗は元親の言葉を吟味するように僅かな間沈黙して、首を傾いだ。
「普通逆じゃねえのか。言うんだったら、間違っても、女どもには会わせられねえ、だろう」
元親は真面目な顔で首を横に振った。
元親は言葉の使い方を間違えた覚えはなかったのだ。
正しく、間違っても女どもには会わさせたくねえ面だと思っている。
元親は目を細めて悪戯をしかけるときのように笑ってみせた。
「こんな色気ある面、拝ませてやったら、女のほうからしなだれかかってくるだろうよ」
言葉通りに、政宗の肩にしなだれかかってみせれば、政宗は元親の肩に腕をまわして楽しそうににやりと笑った。
「なら構ってくれよ、Honey でなきゃ、寂しくてその女どものほうへふらふらと誘われちまうかもしれねえぜ?」
「何だ、んじゃテメエ、まじで突っ込みたいだけか」
「出来ることならアンタに突っ込みたいんだが、アンタがつれなけりゃ、仕方ねえからなあ」
唇に笑みを刻んだまま、政宗の手が元親の腰をするりと撫でた。
「こーの浮気モン」
「だから浮気できねえように見張っててくれよ。アンタに縛られるなら光栄だぜ?」
「素直に縛られるような質でもねえくせに」
「アンタだけは特別だ。・・・なあ?」
「あ?」
元親の肩をだく手に意図的に力が込められる。
もう片方の手が、元親の頤を包み込んで政宗のほうへと上向ける。
元親曰く、女どもには見せたくない色気のある面で、政宗は形のいい唇を優美に引き上げる。
「アンタ、おれを焦らして楽しんでんのか?」
「そりゃあテメエの専売特許だろうが」
しれっと言い返してやれば、政宗は喉をふるわせた。
「さっきから、おれは必死にアンタを口説いてんだが」
元親は確かにと頷いた。
「一々断ってくるなんざ、珍しいって感心してたところだぜ」
「嫌われたくねえからな?」
「ほー、殊勝なこったな」
頤を包み込んだ指が、耳のしたをくすぐるようになぞる。
その感触と、囁くように落とされる政宗の声に、元親は気持ちよさそうに目を細めた。
目を閉じるなと言わんばかりに、政宗は顔を近づけて視線を絡ませてくる。
元親は内心で、そろそろ限界かと思案していた。
何がって、政宗の殊勝な態度と、元親の理性が。
今にも食い尽くさんと言わんばかりの視線が、真正面から元親の瞳を射抜いて絡めとる。
瞬きすらもったいなくてしたくない。
ああ、やっぱり先ほどの言葉は間違っていない。
女どもには絶対に見せてやりたくなどない。
こんな、とろけそうに色気のある、この男の凶暴な笑みなんぞ。
元親の瞳をその凶暴な目線でこじ開けて。
「なあ、そろそろ素直に抱かれろよ」
低い吐息に、半ば降参と両手を上げそうになったのだが、元親はもう少しこの滅多にない状況を楽しみたかった。
すなわち、この男を焦らしているという状況を。
「だったら、もっと素直にがっついてみせな」
唇を弧に描いて笑ってみせれば、政宗は歯を見せて一笑した。
飢えた獣の目が凶暴な色を映してぎらりと光る。
今度こそ、元親は内心で素直に両手を上げて降参した。
背筋がぞくぞく震えて、たまらなくなった。
この男の前では、理性なんてものは至極あっさりと崩壊する。
「アンタの中でイカせろよ」
「いいぜ?テメエと一緒にイッてやらあ」
仲良く逝く前に、とりあえず貪るような口づけから。