花より団子 紅葉より実

 ふらりとやってきた元親を、政宗は、いい時に来たなと歓迎してくれた。
 そして挨拶もそこそこに、何とか小十郎を言いくるめて城を出、連れてこられたのが、城の近くにある山だった。
「ふえ〜。すっげえなあ」
 大口をあけて感心する元親に、政宗は自慢げに鼻をならした。
「アンタのとこは、まだここまで見事に色づいてねえだろ?」
「確かに、ようやっと変わり始めたなあってとこだな」
 政宗の言葉を肯定して、元親はもう一度、すげえなあと言った。
 唐紅に色づいた楓。
 真っ黄色の銀杏葉。
 視界に映る色とりどり。
 元親は頬をゆるめて。
「ギンナンがとれるなあ」
「……」
 ほくほくと、機嫌よく笑った。
「Ah,食い気かよ」  
 政宗は額に手をおいて、わざとらしく嘆息した。
「んだよ、秋といったらうまい飯だろ?」
「ギンナンもいいが見事な紅葉も見てやれよ」
「ちゃんと見てるぜえ?葉だけ愛でて、はい終わりってのも、それこそ失礼な話じゃねえか」
 歌うように元親は指折り数える。
「秋の新米だろ?秋刀魚に銀杏、柿に栗」
 それから、と続けようとするその先を手をあげて遮って、政宗は肩をすくめた。
「わあったわあった。帰ったらちゃんとリクエストしてやるよ。で、アンタの所望は?」
「テメエの飯」
「Han?」
 何の迷いもなく返された所望の品に、政宗はおもしろそうに眉を上げた。
 元親は紅葉葉を見上げていた視線を政宗に向けて。
「お前の作った飯が食いてえ」
 唇を弧に描いて、それこそ紅葉葉に負けぬ艶やかな笑みをその顔に浮かべ。
「餌付けされに来てやったのさ」
 政宗は思わず頬をゆるめていた。
 真正面から望まれることは悪くない。
 たとえそれが料理の腕だとしても。
「OK,によりをかけてやるよ」
 だから、と一度言葉を切って。
 政宗はにやりと笑った。
「おれの飯なしじゃいられなくなっちまえよ、Honey」






*あとがき*
餌付けされる兄貴と、餌付けする筆頭。
秋は美味しいものが多いですからね!
伊達軍有職故実で書こうと思っていたんですが、ちょいと設定がずれてしまうので、ペーパーのほうで書かせていただきました。
兄貴はきっと風流と食い気とどっちも取るタイプです。
実は餌付けするのも結構楽しい筆頭だといい。
料理好きとしては、ほくほく美味しく食べてもらえると嬉しいからね。
そういえば今年の秋はそれほどサンマ食べなかったな(もったいなかった)