とある台所洗剤の効果

基本的に家事は分担している。
今日は元親が夕食を作ったので、後かたづけは政宗の仕事だった。
政宗が皿を洗っている間、元親はテレビをつけて、ソファでだらだらしていたのだ。
テレビは明るい音楽をＢＧＭにＣＭ中。
そうこうしているうちに、皿洗いが完了したのか、政宗が元親の隣に座った。
そこまではまあ普通の流れだ。
座って、手をとられたかと思うと。
そのまま、手を、繋がれた。
「？」
無理矢理こちらの指の間に、自身の指を押し込んで、所謂それはカップルつなぎというやつで。
「何だよいきなり」
流れがまったく繋がらなくて、元親は瞬きした。
水仕事をしていたためか、政宗の手は冷たくてしっとりとしている。
肌をぴたりとあわせながら、政宗は、Ａｈと顔をこちらに向けた。
心なしか、嬉しそうに見えるので、元親は意味も分からず照れくさくなる。
「さっきテレビで流れてたじゃねえか」
「あん？」
政宗は目を閃かせて、小さく笑って見せた。
こういう顔をすると、この男は年下くささがでる。
唇からこぼれたのは、とある台所用洗剤の名前とＣＭのメロディライン。
「使うと、手を触りたくなるんだろ？」
繋いだ手にきゅと力を込められて、まだ冷たさを残す親指が、元親の手の甲を戯れにつと撫でる。
元親は顔をしかめた。
「ヤラシイ言い方すんな」
その声はわざと低められた、体の内側に響く声で。
件のＣＭとはかもしだす雰囲気は正反対だったからだ。
あのＣＭはもっと健全で健康的だった。
それに。
「歌詞もねつ造じゃねえか。手をつなーぎたーくなあ〜る、だろうがよ」
「合ってるじゃねえか」
ほら、と無理矢理繋いだ手を上げてみせる政宗は、悪びれたところなど欠片もなく、やはり嬉しそうだ。
元親は呆れた。
呆れたが、同時に、言いようのない恥ずかしさを覚えた。
「まあ、合ってるけどよ・・・」
ごにょごにょと言い返す声に力はなく。
馬鹿みたいで、実際、こんなカップルがいたら、お前らちょっとどっかへいけよというぐらいに馬鹿だと
自分自身も思うのだが。
嬉しそうな顔で子供っぽいことを仕掛ける政宗を見ていると、今は二人しかいないのだから、まあ、いいかと。
ＣＭがあけたテレビに視線を戻しながらも、
繋いだ手に、同じようにちょっと力を込めて握りかえしてしまった元親だった。