Requiem
その男は以前会ったときと比べてひどく様変わりしていた。
これといってしかし見た目が変わっていたというわけではない。
黒い甲冑。
黒い眼帯。
片目なのももとからで、別にそれは自分たちがこの男を倒したせいではない。
そう、以前に自分はこの男と出会っている。
敵同士として。
それは丁度ここから西へずっと行ったところにある国王の城でだった。
男は一人だった。
けれど、以前敵として刃を交えたときは、一人ではなかった。
隣にもう一人。
同じような黒い羽織を肩に掛けた、飄々とした風を纏わせた雰囲気の銀髪の男が隣にいた。
けれど男は今一人だ。
一人で、鈍く光る刀をぶら下げて、気だるそうな視線をこちらに向けている。
刀から滴る朱。
男の前にくずおれているのは、魔族たちの王。
この世を支配しようとしていたはずの、自分たちの最後の敵のはず、であった。
何だ、とこぼした声を聞き取ったのだろう、その闇を溶かした瞳がこちらを認める。
「ああ、お前らか」
刀を持つ手をだらりと弛緩させて、男は、たしか政宗と名乗った男は、口の端で微かに笑んだようだった。
「案外早かったじゃねえか?腐ってもここは魔王の城だったはずだけどなあ」
そう、ここは魔王の牙城だったはずだ。
けれど、自分たちの前に立ちはだかるのは、至って小物の連中ばかりで、力を持った魔族たちは、
すでに死体となって自分たちを虚ろな目で眺めるだけだった。
「Ah,それもそうか」
政宗は納得したかのように喉をふるわせて笑う。
身体を二つに折り曲げて、どこか狂気じみた笑い声を上げて笑う姿を、ただ見つめることしかできない。
自分たちはまだ目の前で起こっている現実を理解できないのだ。
この男は、魔王の配下のはずだった。
配下として自分たちの前に立ちふさがり、一度敗れた男。
もう一度、自分たちの前に立ちはだかるのは分かる。
何度でも相手になるつもりだった。
それが、何故、この男は。
「アッハ、クッ」
主であるはずの男の屍の前に立ち、血に濡れた刀をしまいもせずに心底可笑しくてたまらないとばかりに笑い声を上げているのか。
「テメエらの前に、おれが!掃除してやってたんだったなア」
背中を伸ばして、政宗は顔を上げた。
瞬間、ぞくりとした言葉にできぬ恐怖が背中を舐めた。
一つ目にあるのは闇だ。
かつて見た、自信と野心で輝いた瞳ではない。
助けを求めるようにその隣にいるはずのもう一人の姿を探した。
政宗はその目の動きを捉えて、いっそ優しいとも言える表情を浮かべた。
静かな声は、この上もなく優しく。
「元親は死んだぜ?」
この上もなく甘やかだった。
瞬いて、何だってと無意識に問い返す言葉が零れた。
政宗は首を返して、かつて己の主であったはずの男を、魔王と呼ばれた男を見下ろした。
「テメエらと戦ったあのあと、死んだ」
「テメエらのせいだってわめく気はねえぜ。ありゃこっちから喧嘩を売った。
勝負事だ、お前らが勝って、おれらが負けた。それだけのことだ」
「おれは死ぬほどの怪我でもなかったし、元親だってまだ生きてた。
むしろその点でいえばテメエらには感謝してるぜ?
逃げる隙をくれたんだからな」
「血流してふらふらだったが、おれは身体の自由がきかないってことだけで、それ以外は問題なかったし、
元親だって、ちゃんと治療すればどうにかなった」
「こいつが、力をつかってくれりゃあ、どうにかなった程度の傷だったのさ」
屍を見下ろす政宗のそれは、空気をも凍らせてしまいそうなほどに、冷えた視線だった。
政宗はふと息を吐いて笑ったようだった。
「ま、こいつに頼ってどうにかしてもらおうだなんて、甘いこと考えてたおれが一番間抜けだったってことだがな」
だから殺したのか、と問う己の声は掠れていた。
ああ、とあっさりと肯定する声は、何の気負いも感じられなかった。
まるで、明日の天気は晴れだろうか、と問われて何となく肯定した、そんな声だ。
自分と同等の力をもつ魔族たちを屠り、魔王を屠ったその身体には傷などないように見えた。
どれほどの力を手に入れたのか。
この男をここまで駆り立てたものは、隣にあるはずの存在の欠如故か。
それは哀しみなのだろうか、復讐心からなのだろうか。
分からないほどに、男の気配は静かすぎた。
悲嘆にくれた涙も、激情の炎も感じられない。
あるのはただ静かで空虚な闇だけだ。
ああ、と心のどこかで分かった気がした。
この男を突き動かしているもの。
「別にここで、お前らに殺されてやってもいいんだがな」
「二度も同じ相手に負けるのは、さすがに癪にさわる」
「だからもう一度おれを追いつめてみせな」
ぱちりと軽い音がした。
瞬間、燃え上がる屍。
魔王と呼ばれ恐れられた男の、それが最後だった。
とっさに防御の術を唱えたが、内心でこれではもたないと悟った。
宙を焦がすように燃えさかるオレンジ色の炎の中で、政宗は一人立っている。
その長い指がすと宙を切るのが見えた。
身体がふわりと浮かぶ。
何故と叫んだが、その叫びがむなしいことも分かっていた。
「何故、ねえ?」
きっと理由なんてないのだ。
何故なら。
「煩わしくなったってのが、一番それらしい理由かもしれねえな」
世界を滅ぼそうとする理由には。
「元親はもうこの世界にいないしな」
それがきっとこの男の本音であり、身体を動かす理由だろう。
「魔王は世界を支配したがった。おれは別に支配したいなんて思ってねえ」
「元親のいない世界なんぞ、ただ煩わしいだけさ」
ぱちりと指が鳴る。
世界が暗転する。
ものすごい力で、結界ごと吹き飛ばされたのだ。
開けていられない視界の端で、炎の中一人佇む姿を見た。
政宗の闇色に光る目が、一瞬炎の朱を反射させてきらりと閃くのが見えた気がした。
耳を打つ囁きは泣いてしまいそうなほどに甘やかで。
「さあ、始めようぜ?」
このかくも煩わしい世界へ美しい鎮魂歌を。
愚かな者達の最後の宴を。
「Let's Party!!」
それはただ一人に捧げられる鎮魂歌
+あとがき+
何て言うか反則もいいところなブツですが、思わず我慢できずにやっちまった一品(いつもだろう)
すいません石を投げないでください!
ええ、兄貴sのヒーローズの染め衣装に激しく衝撃をうけたゆえにできあがった妄想です。
一目みたときから思ってました。
「なんでそんな中ボス・ルックなん?!」
ドラ○エとかF○とかに出てきそうな中ボスそのまんまだと思ったんです。
つかいるよ絶対こんなの!(超主張)
二人組ででてきて、城っぽいダンジョンの真ん中とかで戦闘になって、わりとさっくりヤられる感じの!!
で、主人公パーティとの戦闘がもとで兄貴が死に、
魔王を下克上でぶちのめした後真のラスボスとして世界を滅ぼそうとする筆頭、なんぞという
外道きわまりない妄想がこう、ね・・・(目をそらす)
兄貴も筆頭も、魔王配下の中ではそこそこのランクの配下なわけですが、
実は人間とのハーフなわけで、二人とも幼少期からは色々苦労してきたわけです。
そこで、そこそこ成り上がってやるぜ!ってな具合で野心をもちつつ、
それでもトップまでは目指さずに、二人でつるんでそこそこの地位にいて、
世界を支配したいんだったら勝手にすれば、的な具合で、魔族にも人間にも肩入れせずに(一応魔王配下なので魔族に属してる意識はありますが)
結構好き勝手にやってたわけです。
二人でぶいぶい言わせてたわけです。
喧嘩っぱやく喧嘩好きな不良ですから所詮!
で、どっかの城をおとせ、とかいう命令に従って活動していたところを、たまたま勇者パーティと鉢合わせし、戦闘になり、負ける、と。
それでも兄貴は全然勇者ご一行を恨んではいませんでした。
あいつら強えなあ!とか感心して、また戦ってみたいなとか、青春スポ根マンガみたいな勢いでさわやかな最後の言葉を呟いて目をとじるわけです。
どうにもこうにもならなかったのが筆頭です。
こんなときばかりは素直に上司である魔王にどうにか助けてもらおうと思ったのですが、
日頃の行いもとい、二人が純粋な魔族ではないことを理由に放っておかれて、兄貴は結局お亡くなりになり。
筆頭の中で孤独な獣が目覚める訳です。
ふっきれた筆頭は兄貴を埋葬したあとはひたすら力を蓄え。
一気に下克上です。
今まではヤンチャな不良二人組だったとは思えないほどに、帝王の貫禄纏わせた闇の騎士に変貌するわけです(そろそろトんできてますよこの人)
復讐とかではないんです。
負けたのは自分たちの力不足のせいですし。
なので、ただ単に、ひたすらに虚しく煩わしいだけなのです。
そんなわけで、世界を道連れにひたすらあとは破滅への道を突き進むだけです。
はた迷惑この上ない男ですね!!!!(喜々として)
有り得ないほどにヘタレでウザイ!!
弱い、弱すぎるぜ!
ダメダメにもほどがあるだろおおおおお!!
と、勇者様は内心でぶちきれておられることでしょう。
魔族同志の内輪もめやら私怨に世界を巻き込むな。
だからこういう奴に下手に力もたせるとダメなんですよ〜(何)
物語の前半では、ヤンチャなお馬鹿っぷりが愛おしい、憎めない敵二人組な兄貴s。
好敵手とかいてライバル★的な勇者一行とのからみっぷり。
酒場にもいますよ!!(私信)
情報収集に酒場によったら、「よ!奇遇だなあお前ら!」「Ha!相変わらず土くせえ格好してやがんな」と片手を上げて挨拶してくれちゃう軽さです。
たまに事態をひっかきまわしてトンズラしたりします。
余計な手間を増やしやがって!と思いながらも憎めないのは、ヤツらの裏表のない態度故でしょうか。
そんな彼らが、中盤、一度まともに戦闘イベントとしてぶつかり、負かしたあとしばらく登場しなくなるわけです。
どうしたのかな〜と思いながらさくさくと話を進めていき、ほどよくレベルもあがり、さあラスボス攻略だ!と魔王の城へ乗り込んだところで。
重苦しい展開勃発。
不良少年から暗黒騎士へと変貌した筆頭がラスボスです。
世界を滅ぼすとの宣言通り、どんどん荒廃していく世界。
時間との戦いです。
そんな怒濤の展開の後半。
妄想しながら何故か頭に浮かんてできたロープレはワイルド○ームズでした(無印)
何でだ・・・?
兄貴sのノリがゼ○トとかぶってるのかもしや(つまりお馬鹿で憎めない敵キャラ)
とりあえず筆頭が有り得ないほどに弱くてカッコわるくてすいません(土下座)
普段はもうちょっとしっかりしてて格好いい男だと思っております・・・・(フェードアウト)
以下蛇足の決別問答。
「おれ、お前のそんな、青い顔、初めて、見たぜ」
「黙ってろ」
「みっともねえ、面、してんじゃ、ねえよ」
「黙れ!」
「結構、楽しめた、ぜ、まさむね・・・」
「頼むから!もうしゃべんじゃねえ・・・」
「お前と、馬鹿、やれてよ、おれ、たのし、か・・・」
「・・・もと、ちか? 元親・・・。元親!!!」
お粗末様でした!!!
そしてホント好き放題してすんませんしたああああああ!!!!(土下座)